著しい成長によって日に日に体格が変わっていく中高生は多くの不安が付き物です。その中でもその人の1つのステータスとなりうる「身長」は多くの中高生を悩ませています。
「平均身長より5㎝低い」、「友達より身長が低い」、「もう身長の伸が止まっているかもしれない」など身長についての悩みの理由は人それぞれでしょう。
中高生の多くが感じている不安を企業が感じ取らないはずがありません。現にテレビのcmやネットには身長を伸ばす効果があるとうたわれている商品が多くみられます。
このサプリは成長期の子供の身長を伸ばすために有効なのか?身長サプリの中身はどのようなものなのか?という疑問にできるだけ細かく答えていきたいと思います。
どのように身長は伸びるのか?
そもそもどのように身長が伸びるのかを知らない人が多くいると思うので始めに解説したいと思います。
骨には隣の骨と連結している部分に軟骨部分があり、その軟骨部分が伸びることで骨が伸び身長が伸びます。この部分は骨端線と呼ばれ骨端線が存在している限り身長が伸びる可能性があります。
この骨端線が閉じてしまうのがだいたい男子は18歳、女子は15歳ぐらいのときでそれを境に身長の伸びが止まってしまいます。
骨端線が閉じる時期は人により違うためまだあるかはレントゲンをとらないと分かりません。
また、身長が伸びるタイミング・伸びる速さは人それぞれで、小学生から伸び始める人もいれば中学後期から伸び始める人もいます。
男子限定ですが、詳しくは成長期(男子)の年齢別平均身長を分かりやすくまとめてみたに書かれています。
身長を伸ばす効果があるサプリ=栄養サプリである
「身長を伸ばす効果があるサプリ」、「10㎝身長を伸ばすサプリ」などうたわれていますが本当に効果はあるのでしょうか?
結果から言うと、これらのサプリメントに子供の成長を促す効果はないです。
多くの研究でサプリメントに含まれている成分だけで子供の身長が伸びることはないという結果が出ています。
ではなぜこれらのサプリメントに「成長を促す効果」があるとうたわれているのでしょうか?
成長期の子供は常に栄養が足りていない
昔と比べて今の日本はかなり裕福になり食べ物に困ることはまずないでしょう。しかし、日本の成長期年代の人達は海外基準に比べ栄養不足の人が多いとされています。
日本人は脂質・タンパク質・炭水化物の3大栄養素はバランスよくとれていますが、無機質・ビタミン・鉄などの3大栄養素と同じぐらい重要な栄養素をあまりとれていません。
そのため、「日本の子供の8割は栄養失調のリスクがある」と言われるほどです。
著しく体の構造が変わっていく成長期の体は骨や筋肉成長のために常に栄養を欲しています。特に体を整える効果があるビタミンと血液の巡りをよくさせ酸素を運ぶ効果がある鉄は成長期の体に必要不可欠です。
スポーツを週5~7で励んでいる人に低身長の人が多くみられます。それらの人に低身長がみられる理由は多くありますがその中の1つが栄養不足でしょう。
スポーツで疲労しきった筋肉の回復には多くの栄養が使われます。そのため連日スポーツをしていると食事などでとっているすべての栄養が筋肉回復に使われてしまい体の成長のための栄養が足りず、一時的に身長の伸びが止まってしまいます。(だいたい受験期やケガの時に一気にのびる)
筋肉と身長との関係は「成長期に筋トレをすると身長が伸びない」は嘘!理由と正しい筋トレ方法に詳しく書いています。よかったら見てください。
特に鉄は一回の食事で少量しか取れないためスポーツをやっている子に不足することが多く、知らないうちに貧血になりパフォーマンスが落ちている場合が多々あります。(詳しくは「スポーツ貧血」で検索してください。)
ここで少し役にたつのが「身長を伸ばす効果があるサプリ」です。
これらのサプリには主にビタミン・カルシウム・鉄が含まれていて、成長期の体に足りない栄養をピンポイントで補うことができます。
これらの点から企業は「足りていない栄養を補えば、自然に身長が伸びる」と考え、サプリメントは「成長を促す効果がある」とアピールしています。
しかし実際のところこれらのサプリにはどんなに多量に飲んでも身長を伸ばすほどの量の栄養素は入っておらず、企業は都合よく効果を誇大表記しているだけでしょう。
「身長を伸ばすためのサプリ」とは考えず、「足りない栄養を補うサプリ」と考えるといいと思います。
スポーツをしている子、少食で栄養素をとりきれていない人は1度試してみてもいいかもしれません。
サプリの成分を紹介
(商品により多少異なりますが)サプリメントは主にカルシウム・ビタミン・鉄の3つの栄養とプラスαでアルギニンというものが入っていることが多いです。
サプリメントの中に入っているこれらの栄養素はどのような効果があるのか?成長と関係あるのか?について1つ1つ解説していきたいと思います。
カルシウム
牛乳などに多く含まれるカルシウム(Ca)について解説したいと思います。
もともとカルシウムには「骨を強くする」という性質があり、カルシウムを取ることで骨密度が上がりケガなどをしにくくなるという効果がありました。
「骨を強くする」という情報がどんどん人に伝わっていくうちに「骨を伸ばす」という嘘の情報になってしまい多くの誤解を生みました。その情報に企業がのっているだけなのでカルシウムには身長を伸ばす効果はありません。
実際、多くの研究でこのことは証明されています。
ただ、カルシウムをとらなと骨の中身がスカスカになり危ない状態になってしまいます。1日1本は牛乳を飲むようにしましょう。
ビタミン
ビタミンは13種類のものがありそのほとんどは体の調子を整えるための栄養素です。この13種類の中の一番身長と関係のあるビタミンを挙げるとするならば「ビタミンD」です。
ビタミンDは肝臓や腎臓で活性化されカルシウムの吸収を高める働きがあります。しかし、そもそもカルシウムは「骨を強くする」性質があるだけで、「骨を伸ばす」性質はもっていません。よって、いくらビタミンDによって吸収を高めたとしても意味がありません。
しかしビタミン(13種類)には疲労回復効果、シミ予防(色素沈着予防)、肌荒れ防止などの効果があるため意識してとるといいと思います。
鉄
上でも紹介しましたが、多くの成長期の子供たちが知らないうちに悩まされているのが鉄不足(貧血)です。
卒業式などで倒れてしまう人は「脳貧血」というもので、「貧血」ではありません。貧血は分かりにくく自分で診断するのが非常に困難です。
鉄が不足していると血中に含まれる酸素が筋肉にいきわたらずにすぐに息切れをしてしまいます。スポーツをしている男子2割、女子5割に貧血症状が出ていることが分かっています。
スポーツでパフォーマンスが上がらない、持久走の体力が伸びないという人は一回血液検査をしてみることをおすすめします。鉄分を補給するサプリメントというものがありますが、鉄分は飲みすぎると体に猛毒なので注意が必要です。
ちなみに鉄と身長はまったく関係がありません。
アルギニン
アルギニンとはアミノ酸の一つで非必須アミノ酸に分類されます。このアルギニンには成長ホルモンの分泌を促すという性質があるため今注目されている栄養素です。
また、成長ホルモン分泌以外にも疲労回復・免疫力向上などの効果があるため多くのサプリメントに取り入れられています。
ではこのアルギニンが入っているサプリメントをとれば身長は伸びるのでしょうか?答えはNoです。
サプリメントに入っているアルギニンの量は医療で試験的に使われているものの10分の1の量しか入っていません。また試験では点滴で体内に直接吸収されますが、サプリの場合は余計な場所で吸収されてしまうので実際に取り込まれるアルギニンの量は微々たるものです。
さらに120人の低身長の子供たちにアルギニンを投与したところ薬剤によって活性化された成長ホルモンは成長促進に関係しないということが分かっています。
サプリで成長期の子供の身長は伸びるのか?
上で書いてきたように科学的・医学的な観点からみると「身長を伸ばすサプリ」はまったく根拠がありません。
しかし、サプリメントのサイトを見ると「実際に身長が伸びた」という口コミが見られます。サプリメントの効果で伸びたのか、たまたま飲んでいる時期と成長期が重なったのか、企業の桜なのか、今一つ分かっていません。
スポーツのやりすぎや偏食などによって成長に十分な栄養が取れていない人は、サプリメントを飲むと身長が伸びる可能性があります。
サプリメントを飲んで特に害はないので身長について悩んでいる人は一回試してみてはいかがでしょうか。